整骨名人
このホームページは「整骨名人」使用者のためのサイトです
ホーム
使い方
お知らせ
目的
論文
Q&A
個別掲示板
共有掲示板
動画
管理者用
ログイン
論文
この論文は柔整学の構築の為、整骨名人を使用する柔整師と協同して約半年間かけ研究した結果です。
但し治療方法は基本的な事のみで手技を加える事で10%程度有効率を増せると思います。
タイトルは「腰部・下肢痛の一除去方法」です。
Key words: 重心復元・骨格矯正
【要約】
今年度、柔道整復学研究費の交付を受け行った研究について報告する。
これは腰部、下肢部、下肢関節部の施術を目的として来院される、全ての患者を対象として行った。
現在の柔整業務に於いて、腰部、下肢部、下肢関節部への施術が重要であるのは、言うまでもない事であり、今後更に進む高齢化と共に、一層社会的要請が高くなるのは、必然であると思う。
報告する研究は、佐賀県、長崎県、熊本県、福岡県の柔整師7名の協力を得て、来院される患者のうち、当該部位に何らかの症状が有る者を無作為に選び、決められた手順で、同じ施術をするというものである。
方法は、柔整業務の中で開発した「腰部重心復元矯正器」と称する器具を10分間を限度として装着する。叉股関節、膝関節の施術に際しては、これと同時に本器の設計理論を応用した徒手施術を併用するというものである。
施術によって効果が確認されたら(1)有効、数回の施術で無効なら(2)不変の為中止、疼痛を訴えたら(3)悪化の為中止と分類した。
評価方法はVAS評価法で行った。(図1)これは毎回施術前に、表情を変えた顔の絵で疼痛の程度を指し示してもらい、術後に疼痛の減少程度を距離で示してもらう方法で、全て患者自身に評価させるものである。合わせて外見上の姿勢変化、レントゲン、MRIも可能な限り撮影し、比較検討した。
結果は、全症例536例中、(1)有効460例、(2)無効の為中止72例、(3)悪化の為中止4例となり有効率85.8%、無効率13.4%、悪化率0.7%となった。
この研究の特徴は、腰・下肢部の様々な症状に対し、一律に同じ方法で施術するというものである。この理論が正しければ、骨格と重心に主要な原因がある者には有効となり、他の要因が強い者には無効、且つ無害に終わると考えていた。若干痛みを訴えた者もあるが、その後悪化する事は無く、注意すれば問題は無いと思う。
結果的には当初の予想を上回る有効率であり、その中には、かなりの重症例も含まれている事を考え合わせれば、柔整師の業務にとって有意な結果だと考えている。
【緒言】
現代の柔整業務の中で、腰の施術は文字通り要の部分ではないかと思う。ここは単に 腰だけの問題に終わらず、上半身・下肢部にも広く影響を及ぼし、患者にとっても要の部分である。来院者の主訴も最もここが多い。
しかし、これに対する手段は、安静と保存的療法が主となり、積極的に速やかな改善を目的とする施術方法は乏しい。カイロプラクティック等の徒手施術は、熟練を要するものであり、にわか仕込みでは、より悪化を招く事も少なくない。更に保存的療法を懸命に行いつつも、症状が改善しないばかりか、増悪する事もあるのが現実である。
社会的要請が非常に高いこの腰の問題に対し、高齢者や妊婦にさえも安全に一定以上の改善成績が見込める施術方法を開発する事が、柔整業務にとっても、柔整師に対する社会の信頼を厚くする為にも必要であると信じ、今回の研究で一施術法を提案する。
対象症状は、全ての腰部痛、下肢関節痛、関節以外の下肢痛である。
【方法】
佐賀県、長崎県、熊本県、福岡県の柔道整復師7名と協力して行った。
この協力柔道整復師の施術所に来院された患者のうち、腰部・下肢部に何らかの症状を有する者を無作為に選んだ。内訳は次のとおりである。6~90歳までの男性249名・女性287名、計536名。平均年齢は45.53歳であった。
永年の柔整臨床の中で 新しく開発した理論(以下本理論)により設計、製作した 腰部重心復元矯正器(以下本器)を決められた手順で 最長10分を限度として、仰臥位の骨盤の下に敷いて装着する。(写真1,2)
本器は左右の腸骨と仙骨の3点に接触し、各々を別方向に牽引しながら一定の角度で停止する。これにより、呼吸と共に僅かに動き続ける骨盤の関節と重心を修正する。
使用法は、定位置に本器を置き患者自身の体重で本器に圧力をかけるのみである。
本理論は、多数の腰部症状を訴える患者を主に触診、視診、X線写真を分析していく中で得た、私見に基づく仮説であり、概要は以下の通りである。
・重心を支える関節は、正確に緊密に連結し、且つ充分な可動性を有する事が、正常な状態である。
・人体には設計上、最も良い形と重心バランスがあり、その個体差は意外と少ない。
・これに対して問題が発生する場合、変位の多くは定型的であり、悪化の過程も多くは規則的である。
最も良好な場合と比較して、定型的な変位をした場合とは、以下の通りである。但し、ここで示す程度は、絶対的なものではなく、あくまでも相対的であり、微妙な変位でもある事を予め承知願いたい。
(1)腸骨は、両側共前傾角が減少する。
(2)仙骨は、前傾角が増大する。
(3)上位腰椎・下位胸椎の前弯は、減少する。
(4)下位腰椎の前弯は増す。
(5)両腸骨は、立位上方から見て、逆時計廻りに変位しながら、やや右に移動する。
(6)仙骨は、立位上方から見て、時計廻りに変位しながら、やや右に移動する。
(7)腰椎は、立位上方から見て、逆時計廻りに回旋変位しながら、左凸に側弯する。
(8)椎体が、いわゆる階段状変形を起こす場合、連続して前傾するが逆になる事は無い。
(9)腸骨の前傾角の減少は、左右比較すると左に強く、右はやや少なめに現れる。
まとめると写真3~5のようになる。
これらの動きには、原因があり互いに関連もある。
(1)~(9)の変位は、程度の多少や偏りはあっても、多くの患者で基本的に見られることが多く、方向性は定型的である。
以上の仮説を元にして、この修正を総合的に行う為に開発したものが本器である。
修正方向、圧力、幅は誰にでも適応させる為に、患者の平均値で設計した。
人体は、それが良い方向の圧力なら、非常にわずかでも良好に作用するが、反対にその人にとって不良な方向の圧力でも、わずかなら、悪化は防げるという経験則がある。その微妙な必要最小限の力で、必要な施術操作を行い、適応者には有効でも、不適応者には無効・無反応に終わる器具という目的で製作した。(写真6,7)
股関節・膝関節に何らかの症状を有する者に対しては、本理論を応用した簡単な手技も行った。
両関節は互いに関連があり、時期と程度は異なっても両側に症状が現れる事が多い。これは両関節が異変を起こすのは、腰部と重心の影響が強い為で、当該関節のみの施術では効果は限られている。従って腰部の施術をしながら、股・膝関節を同時に施術する。
手技方法は、左下肢に対して、術者は右手で下腿上部を、左手で下腿下部を把握し、股関節を外旋・外転・屈曲しながら、膝部も同時に屈曲する。両部が80°位の屈曲角になったところで、わずかに膝関節を内旋させ固定し、患者に下肢を伸展させる方向に弱い力を加えさせ、その位置で3秒程度維持する。但し80°以前で患者が痛みを訴えたら、それ以上の角度で行う。これは極めてソフトに無痛操作で行う。
右下肢に対しても 同じ操作を行うが、最後の膝への旋回方向が逆になる。即ち、右膝に対しては外旋となる。
この操作を3~10回程度、状態に合わせて繰り返す。これに要する時間は約2分程度である。
本器装着を行うも、症状が不変の場合は 不変中止とし、装着により痛みを感じた場合は 直ちに取り外し、悪化の為 中止とした。
評価方法は、ヴィジュアルアナログスケール(以下VASとする)のフェイス法と距離評価法の2つで行った。
これは毎回術前に、顔の表情を表した絵で 患者自身の苦痛の程度を示してもらい、術後に 疼痛の減少程度を、距離で示してもらう方法で、全て患者自身に評価させるものである。
また、レントゲン・MRI等の検査が可能な場合は、フィルムを入手し、外見上の姿勢変化の写真も撮影比較した。
【結果】
全症例536例中、(1)有効460例、(2)不変の為中止72例、(3)悪化の為中止4例であり、有効率85.8%、無効率13.4%、悪化率0.7%となった。
症状別内訳は、腰部痛465例、股関節痛40例、下肢部痛86例、膝関節痛54例、足関節痛2例、足根部痛5例であった。(表1)
有効率は、男女別、年齢別、急性あるいは慢性症状別でも 大差はない。
無効の為中止となったものは、本器の施術に対し全く反応なしであった。この症例の疼痛の原因は、骨格・重心以外の問題による可能性が高いと考える。
その他に悪化の為中止という症例が若干あったが、その後状態が悪くなる事は無く、注意して施術すれば安全性は保たれると思う。
年齢も6歳から90歳まで幅広く施術を行った。
【考察】
有効例には、基本的な 改善パターンがある。それは、姿勢変化を見ると重心が前へ移り、腰背部が反り、胸郭が持ち上がり、膝が伸びるという形である。(写真8~13)
力を加えて 背を反らせた場合も、より反りやすくなる。(写真14~17)
このような変化は本理論では、外見上、最も望ましいものである。
MRI画像では、階段状変形は少なくなり、椎体後面をつなぐ線で比較すると、より凹凸の少ない状態になる。(写真18~21)
脊柱管の形を見ると、黄色靭帯の肥厚状態が改善され神経路が拡がり、症状が大きく改善され良好を維持している例もある。(写真22、23)
股関節症の場合、徒手施術によって重要な所見である股関節外旋角が、速やかに改善されている。(写真24~27)
辷り症に対しても極めて有効だった。協力柔整師の中で辷り症のみを集中的に施術した者もいたが全例で有効となった。長期に亘り悪化した症例に於いても、急速に改善された例もある。(写真28、29)
結果を踏まえ、方法の欄で述べた仮説の変位が発生する原因を以下のように推察している。
左右腸骨の、前傾角が減少する動きは生活習慣によるものと思われる。即ち、文明生活の特徴で、椅子に座る時間が長く、移動の際も座位が多く、且つ移動による衝撃を受ける事が多い生活では、坐骨が後方から受ける圧力が強力で、必然的に前傾角は減少する。これが固定化すると、影響は上位腰椎と下位胸椎の前弯減少を引き起こす。同時に仙骨は、腸骨の変位とは常に反作用的な変位をする為、前傾角が増大する。この仙骨の動きが下位腰椎の前弯を増大させ、これが長期に及ぶと、仙骨を起点とする椎体前後の靭帯の位置をも変位させ、椎体がいわゆる階段状変形を引き起こす。
この影響は重大で、椎体が前傾し上関節突起が連続的に神経根部を狭窄する為、強い腰痛や、腰部脊柱管狭窄症の主要な症状とされている、間欠性跛行の原因になると考えている。
両腸骨は立位上方からみて、逆時計廻りに変位しながら、やや右に移動することは、内臓位置の影響を受けて発生する。この現象は、右上腹部に位置する肝臓の重量の影響だと考えている。
他の腹腔を満たす主に消化管は、流動的であり、時に軽く、特に重心に影響を及ぼす事は無く、常に一定の負荷を右胸郭下部にかけている肝臓が、重心に近づいてくる事は、無理な想像ではないと思う。
その結果、骨盤はやや右に、腰椎は左凸という形になる。
椎体は凸側と逆の回旋変位をする為、腰椎は立位上方から見て逆時計廻りに回旋変位しながら、左凸に側弯する結果となる。腸骨も重心より右に移動する際、腹部の筋に引かれる為、逆時計廻りの回旋変位を起こし、反対に仙骨は時計廻りの回旋変位を起こす。
腸骨の前傾角の減少は、左右比較すると左に強く、右はやや少なめに現れることについては、骨盤がやや右に寄る事で、下肢の角度が変わり、左下肢が直立に近づき、逆に右下肢の斜度が増す為、右骨盤が下がる。これを人体は腸骨の前傾角で補正する。前傾角がより大きい方が、大腿骨頭を低位に保てる。これで下肢長の不足を補う事ができる為、左右腸骨共に前傾角が減少するのであるが、比較すればより左の前傾角が、減少し、左右の骨盤の高さを調節する。
【結論】
本理論の考え方の核は、現代文明社会という環境が、人体の骨格・重心に様々な悪影響を及ぼしているのではないか?それに対して、どこをどのように、どの程度修正すれば最も良い姿・形に近づける事が可能か?という事である。
この研究はどの患者にも一律に同じ施術をするという、非常識にも思えるものである。
しかし、上記のような考え方が、万が一正しいものならば、骨格を自然の形に近付けるという事で、何らかの良い影響が現れても、当然とも考えられる。結果的には、予想以上の有効率だった事を除けば、予想通りである。
但し不足な点もある。この研究では施術例に対する検討のみ行っており、非施術群との比較という、より統計的に信頼性が高い方法で行っていない。腰部に対する施術も基本的な事のみで、すでに開発済みの有効性を増す手技は行っていない。これらを含めていつか、よりレベルの高い研究が成される事を期待して報告を終える。
今回の研究は「柔道整復学研究費助成金」の交付を受けて行った。このような機会を与えて下さった 日本柔道整復師会 、叉研究に深く御理解頂いた協力柔整師の先生、福岡県柔道整復師会々長並びに学術部に、深く感謝致します。